ご社宝めぐり

港区
廣尾稲荷神社
区指定有形文化財
拝殿天井墨龍図
 拝殿天井(350センチ×440センチ)のほぼ全体にわたる大きな画面には、水墨の線と濃淡のぼかしを巧みに活かし、頭から尾の先までを円状にくねらせながらその姿を現わす一頭の龍が、生き生きと描かれています。図中には、「藍川[らんせん]藤原孝経拝画」の署名と「藍川」の印章(朱印方印)が見られます。「藍川」とは、近代日本洋画最初の画家として歴史的な評価をうける高橋由一[ゆいち](1828~94)が、狩野派の様式を学び、その画法によって水墨画を描いていた時期に使用していた号です。由一が「藍川」の落款を残す現存作品は極めて稀であり、この点でも本図は貴重といえます。
 廣尾稲荷神社は弘化2年(1845)1月24日の「青山火事」によってそのほとんどを焼失しますが、境内に建てれていた石鳥居の「再建 弘化四歳丁未九月吉祥日」の銘文から、本殿及び拝殿の造建年代及び天井画の制作時期のおおよそを推定することができます。港区指定有形文化財(港区教育委員会掲示参照)
廣尾稲荷神社について
【鎮座地】東京都港区南麻布4-5-61
(平成24年[壬辰]1月寄稿)