ご社宝めぐり

中央区
波除稲荷神社
中央区区民文化財
獅子頭
 江戸時代の神社創建時より築地では、獅子は風と雲を従える龍虎を一声でひれ伏させることができるとされ、同神社には巨大な獅子頭一対が、町中に三十対ほどの獅子頭があり、現在も行われている祭礼「つきじ獅子祭」ではそれを担いでまわったと伝えられている。
 この獅子頭はそのうちの一対で、木造金梨地塗りで嘉永元年(1848)3月、南本郷町(現在の築地6丁目)の嶋屋藤次郎が発起人となり製作された。
 神社所蔵の巨大な獅子は江戸時代に焼失し、その他の獅子も、その後の関東大震災で全て焼失してしまったが、この獅子頭だけは江戸時代の地震・洪水といった天災の際には助け出され、また、関東大震災には修理中であったことから無事で、ながらく幸運の象徴とされてきた。昭和2年に世話人より神社に奉納され、平成4年に中央区区民文化財に指定。現在は社殿に安置されている。
波除稲荷神社について
 江戸時代、四代将軍家綱公が手掛ける最後の埋め立てが行われたが、その中で困難を極めたのが波の激しい築地海面であった。ある夜、海面に光を放って漂うものがあり、人々は不思議に思って船を出してみると、それは立派な稲荷大神の御神体であった。早速、現在の地に社殿を造りお祀りして皆で盛大なお祭をすると、波風がピタリとおさまり、工事は無事に終了した。人々は、その御神徳のあらたかさに驚き、稲荷大神に『波除』の尊称を奉った。萬治2年(1659)の御創建。
【鎮座地】東京都中央区築地6-20-37
(令和6年8月寄稿)