ご社宝めぐり

新宿区
十二社(じゅうにそう)熊野神社
区有形民俗文化財
狛犬
 江戸中期、享保12年(1727)に奉納された。熊野神社の末社・大鳥神社の社殿に向かって右側に阿形(あぎょう)(頭部に角を持たない獅子)、左側に吽形(うんぎょう)(頭部に一角(いっかく)を有する狛犬)がある。台座は一つの石材から彫り出されており、腹の下はくりぬかれずに残され、享保十二年九月の年紀と角筈(つのはず)村上町の百姓店衆講中(ひゃくしょうたなしゅうこうじゅう)という奉納者銘が刻まれている。総高は阿形が112.5センチ、吽形が113.5センチで、安山岩製。
 享保年間には、八代将軍・吉宗が鷹狩を機会に神社を参詣するようになり、滝や池を擁した周辺は江戸西郊の景勝地として知られるようになった。狛犬は、この時期に奉納されており、区内において比較的古い時代に造立されていること、また、その姿の珍しさから、令和4年11月、新宿区の有形民俗文化財に登録された。(新宿区教育委員会掲示参照)
十二社(じゅうにそう)熊野神社について
 室町時代の応永年間(1394~1428)に中野長者と呼ばれた鈴木九郎が、故郷である紀州熊野三山より十二所権現を遷し祀ったものと伝えられる。一説に、この地域の開拓にあたった渡辺興兵衛が、天文・永禄年間(1532~1569)の熊野の乱に際し、紀州よりこの地に流れ着き、熊野権現を祀ったともいわれる。明治維新後は、現在の櫛御気野大神・伊邪奈美大神を御祭神とし、熊野神社と改称し現在にいたっている。
【鎮座地】東京都新宿区西新宿2-11-2
(令和5年5月寄稿)