ご社宝めぐり

荒川区
胡録神社
ふんを挽いた臼
 胡録神社の鎮座地である荒川区南千住8丁目あたりは地方橋場村小字汐入(じかたはしばむらこあざしおいり)とよばれており、400年前に上杉家家臣の高田嘉左衛門らが開発した村と伝えられる。
 写真の右臼は胡粉を挽く際に使用されたもの。汐入では明治の中頃まで胡粉の製造が盛んで、当地産の胡粉は品質極上を誇り、人形の上塗りのおしろいや絵具の材料、能面仕上げ、元結(もっとい)などにも使われた。
 胡粉作りは焼いた牡蠣殻を粉にするという重労働であったこともあり、機械加工が普及するにつれ石臼の使用は廃れ、そのうちの一つが奉納された。
 昭和27年に胡録神社に奉納された襖絵(『東神』平成4年10月号に掲載)には、山と積まれた牡蠣殻が描かれ、胡粉の製造が盛んであった頃の面影をしのぶことができる。
胡録神社について
 胡録神社は、永禄4年(1561)8月川中島合戦の折、上杉の家臣高田嘉左衛門等が汐入に移り、村落生活の安寧を祈願するため祀られたと伝わる。古くは第六天と称したが明治以降、当地汐入の生業として盛んであった胡粉作りの「胡」の字と第六天の「六」にあやかり、御社号を胡録神社に改称したという説も伝わる。
【鎮座地】東京都荒川区南千住8-5-6
(令和6年11月寄稿)